第4章 【潔子(友情)】憧れの先輩
「して、冬野。バレンタインデーは、女性から男性にチョコレートを渡すイベントであることは知っているかな?」
なんだか、変な言葉を使いながら近寄る田中先輩。
その隣には西ノ谷先輩。
そして、差し出される二つの掌。
「はい、バレンタインデーは女性から男性にあげるイベントで………で、私は潔子先輩にあげて……………」
あっ………
ああっ………?
田中先輩と西ノ谷先輩が無駄に絡んでくるのはそういうことか!
「あのぅ…大変申し上げにくいのですが………みなさんへのチョコ作るの忘れてました!材料はしっかり冷蔵庫にあります!」
てへっ、と星が飛びそうなとびきりのてへぺろ顔で誤魔化す私。
三年生や縁の下先輩は苦笑い、そして田中先輩と西ノ谷先輩は菩薩顔をしていた。
あぁ、本当に申し訳ない…
が、この結末にちょっと笑ってしまう私もいた。
あぁ、やっぱり烏野バレー部は楽しい。好きだ。
この流れで言葉にするのは恥ずかしいけど、チョコレートがない代わりに。
「みなさんのこと、大好きです!いつも、ありがとうございます!」
私は深々と頭を下げて言った。
顔をあげると笑顔の先輩達が私を見ていた。