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【YOI】銀盤の王と漆黒の王子【男主&勇ヴィク】

第3章 銀盤の王と漆黒の王子


表彰式後の記者会見と自身のSNSで、ヴィクトルは正式に現役引退を発表した。
「有終の美を飾れなかったのはちょっと残念だけど、最後の試合で最高の仲間と最高の勝負ができた。俺も全力で戦った。そして、教え子の勇利が最高の結果を残してくれた。競技者としてもコーチとしても、こんなに嬉しい事はないよ」

「今後は勝生勇利のコーチに専念すると共に、プロスケーターとしても滑り続けていきたい」と清々しい笑顔で語るヴィクトルに、周囲は彼の引退を惜しむ声と同じ位の労いの言葉をかけていた。
会見後、「さあ、これで心置きなく勇利と長谷津に行けるよ。早速手配しなくちゃ!」とウキウキ顔のヴィクトルに、「お前にはまだ、ロシアでやる事が山ほど残っているだろうがバカモン!」とヤコフのカミナリが落ちた。
本国での引退届や会見、セレモニーの他、ヤコフによるヴィクトルへのコーチングのレクチャーの為に、暫くの間はロシアに留まるよう指示してきたのである。
「カツキにはすまんがヴィーチャの為にも、もう少しだけロシアにいてくれ。お前のスケートから学びたいと思っている者達も、ピーテルのリンクには沢山いる」
いつもの仏頂面からほんの少しだけ和らいだ表情で告げてきたヤコフに、勇利は「僕は、オフシーズン中に長谷津に戻れれば良いので」と、横で不満を漏らしているヴィクトルを他所に首肯する。
そんな彼らのやり取りをこっそりと盗み聞きしていたユーリは、小さく息を1つ吐くと少しだけ口元を綻ばせていた。

2位だったヴィクトルは、当然大会後のEXにも招かれており、主催側からEX終了後の引退セレモニーなどの打診もあったのだが、
「俺は、楽しく笑って終わりたいんだ。そんなお涙頂戴な真似したら、罰金払ってでも出ないからね」と却下した。
それだけでなく、ヴィクトルは「リビングレジェンド最後のワガママ」と称して自分のEXの演順を指定し、リハーサルも一部の人間を除いてシャットアウトしたのである。
そのような中、密かにヴィクトル本人からリンクサイドへの立ち入りを許されていた純は、共に作ったプログラムの最終確認を行う。
「そこ、もう少しだけ遠回りするような感じで動いてみよか」
振付の最後、愛する人に近付いていくような仕草をするヴィクトルに、純は声をかけて制止した。
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