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【YOI】銀盤の王と漆黒の王子【男主&勇ヴィク】

第3章 銀盤の王と漆黒の王子


涙を拭いながらも、ユーリはリンクの勇利を一心に見つめ続ける。
今シーズンのユーリは、成長期の体型変化による不調に悩まされていた。
そのような中どうにかロシアナショナルでは3位に入り、その後の試合でワールドの出場権は獲得したものの、FSの最終滑走グループには入れなかったのである。
「何で俺は、もっと早く生まれてこなかったんだ。こんなガチな戦いを、ただ眺めるしか出来ないなんて…」
「同じリンクで試合できたやんか。成長期の苦しい中、ホンマによう頑張ってた。僕なんか、彼らと同じ舞台に立つ資格すらないんやで?」
「それでもサユリは、振付師としてもダチとしても、カツ丼達と一緒だったじゃねぇかよ!俺には…そんな奴いねぇし…」
「君のスケート人生はまだまだなんやから、これからぎょうさん作ればええやんか。来季からシニアに参戦する日本の選手で、君のライバルになりそうな子がおるで?」
「…知ってる。『サムライ』だろ?確かこないだの世界Jrでも優勝してたよな」
ハンカチを渡しながら返してきた純に、ユーリは数度目を瞬かせる。
「うん。君とそれこそ『ガチで』戦う為に、シニアデビューを1年遅らせた位や。オタベックくんもそうやし、ちゃんと君の事を見とるスケーターはぎょうさんおる。勿論、勇利も」
「…」
不調に喘いでいた自分が、立ち直る切っ掛けをくれた勇利との事を思い出したユーリは、無意識に指を自分の唇に当てる。
「それに、僕との約束も忘れてへんよな?いつか僕の振付で勇利に勝つんやろ?ま、僕じゃヤコフコーチとリリアさんの許可は、中々出ぇへんと思うけど」
「…ああ、駄目だって」
「やっぱり」
「違う。『今の俺じゃ、サユリに甘えちまうからまだ駄目』って言われてるんだ」
そう言って苦笑するユーリの両肩に、純はそっと手を乗せた。

プログラム後半に入っても、勇利の勢いは衰えない。
前半ではコンビネーションジャンプを飛び損ねていた勇利だったが、4回転の後に更にタノをつけた3回転を加える事でリカバリーする。
「勇利がクワドでリカバりおった!?」
「凄いわ!」
リンク外で見守っていたミケーレ兄妹が、驚嘆する。
「失敗を引きずらなくなったね。もう、昔の君とは全然違う」
「ガンバレ、勇利!」
勇利の雄姿にクリスも目を細め、ピチットは歓声を上げていた。
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