第11章 バレンタインの日は
それ以降、会話が続かないままである
(まずい…会話が続かねー)
少し焦りを感じる如月
「あ、もう少しで出来るから待ってろよ!」
「はーい」
彼女は至ってテレビとスマホの行き来に夢中なっている
(くそ、いつもならもっと話せるのに…)
遥がバレンタインの話を振ったのにも関わらず食いついてこないことに焦りを感じ始め、ついには会話までもが続かないまま料理を終える
「ほい、オムライスとサラダとオニオンスープ」
「美味しそう…いただきます!」
口いっぱいにオムライスを頬張り幸せそうに食べる遥を見て、この笑顔で死ねると本気で思ってしまうほどの破壊力であった
「お前、ほんとに食ってる時幸せそうに食うよな」
「え?…あ、本当に美味しいので」
「そりゃ作り甲斐があっていいわー」
「そう、ですか?…先生のご飯は美味しいですよ本当に」
「そっか。よかった」
会話を続けた良いが肝心のチョコについては何も触れられていない
「ああ、お前尾崎にしかチョコ渡してないって本当か?」
「へ?…はい。誰も渡す人いないですから」
「誰もって…俺が…あ…」
と言いかけて気づく
しれーっと聞こうとしていたはずがつい口に出てしまう
「ぷっ…!あははは!」
思わず遥は笑ってしまう
「な、なんだよ!俺は…彼氏だろ?!」
少し恥ずかしくなり慌てて言う
「んふふ、そんなこと気にしてたんですか?」
「いや、まぁ…バレンタインだから…」
「ありますけど…チョコじゃないです」
「え?」
「だって、先生みんなからあんなに貰うじゃないですか、両手いっぱいに」
「あ…!でもあれは別に捨てりゃ…」
「女の子が年に1回想う人に作る手作りお菓子ですよ?そんな簡単に捨てるなんて最低です!」
彼女が嫉妬すると思い気を遣ったが結局は責められることとなる
「悪い…」