第10章 約束
卒業式当日
それぞれのクラスの担任教師が生徒の名前を呼ぶ
「高野遥」
「はい」
如月の呼名で席から立ち上がる遥
こうして卒業式で名前を呼ぶ日が来ることを如月は心から幸せと感じる
そして卒業式が終わりクラス全員が教室へと戻る
「みんな、卒業おめでとう。」
その言葉に涙する生徒もいた
遥は如月の目を見つめていた
「この3年間の中で3年一緒の人もいれば、2年や1年の人もいるかもしれないけど先生はこのクラスでたくさんの思い出が作れて本当によかったと思います。みんなこれからはそれぞれの道を歩んで行くけど、なにかにぶつかった時には、学生時代の自分を振り返ってほしいです。何事にもぶつかってきたこの3年間を。きっと振り返れば強い自分を思い出せるはずだから…」
そう語る如月に女生徒たちは感動と別れの寂しさを受け泣いている
男子生徒は熱心に聞いている生徒と泣いている生徒もいた
遥はこの話が終われば如月にどこかに連れていかれてしまうことで頭がいっぱいであった
「どーかしましたか?高野さん?」
と横の席である尾崎がコソッと話しかける
「え?…もう終わるなーって」
「ふふ、みんな泣いてるけどあんたは特権だねー」
「からかわないでよー」
「幸せになれよー」
「また相談聞いてよ?」
「いつでも聞いてあげる」
親友とはそんな約束をした
「じゃ、最後にクラスで写真撮ろうか!」
如月の掛け声に一斉に如月の横へ行く生徒の陣取りが始まる
「お前ら!ちゃんと並べって」
はは、と笑ながら如月が生徒達に声をかける
「高野!今なら横いける」
「え?」
と尾崎に押され如月の横へ来てしまった
「おぉ?珍しいなお前が横なんて」
如月が小さな声で言うと
「押されたんですってば…」
「最後だし、俺は来ないかなーなんて思ってたけど」
そう言うと遥は少しムスッとして目を違う方へやった
「はーい!撮りますよー!」
と保護者たちが一斉にカメラを向ける
遥の祖父も一眼レフカメラを向ける
パシャ――