第1章 三角形 case1
からかわれたんだよね。
だって、黒尾さんは好きな人いるんだし。
それが梟谷のマネージャーなら、見られてしまうとか気にしないかな。
ここ、うちの学校から近いんだから。
また考え事をしだした私の横で、荷物が持ち上げられるのが見えた。
「帰るよ。」
それだけ言って私の荷物と共に京ちゃんが歩いていく。
「ちょ、待ってよ。…黒尾さん、すみません。ココは私が払いますので失礼します。」
伝票を手に取って京ちゃんの後を追おうと立ち上がった。
少し早足でレジの方まで行くと店員に伝票を差し出す。
「こういう時は男にカッコ付けさせろよ。」
レジを打つ機械音を聞いていると後ろから声が聞こえた。
すぐに後を追ってきただろう黒尾さんが財布を手に持って私の横に並ぶ。
「そういうの、好きな人にだけやって下さい。年下の女に払われるとか嫌かも知れませんけど、私はお金に困ってないので。」
財布を持っている手を押し退けて支払いを済ませた。