第1章 三角形 case1
それでも、京ちゃんが離れるまで待ったのは、機嫌悪くなるから気を使ってくれたのか。
そう思ったら、無視は出来なかった。
「長く一緒にいたら誰だって、それなりに好みは把握しますよ。
確かに京ちゃんは親みたいに過保護だし、私は少なからずそれに依存してますから異常かもしれませんが。」
兄妹みたい、とは言っても血が繋がらない異性。
ここまでべったりとくっついているのは、変なんだと分かっている。
たまに、からかわれる以外に問題がないから変えないけど。
「…赤葦は、王子様に昇格しねーの?」
確認するような目と声。
私の反応を観察している。
いつもの、私達をくっつけようとしている黒尾さんとは違う。
この質問は楽しむ目的では無さそうだ。
答えが見付からず黙ってしまった。
タイミング良く、京ちゃんが戻ってきて私の前にジュースが置かれる。
「黒尾さん、さくらに何かしました?」
「別に?」
私の様子が変なのに気付いたんだろう。
京ちゃんがやけに冷たい声を発した。
対して黒尾さんは飄々とした感じで返している。
空気が凍っている。
この場から逃げたい。
「私、お手洗い行ってきます。」
二人を残すのは不安でも、目の前で言い合いをされても止める自信がなくて、席を外した。