第7章 三角形 case4
お茶を一口。
喉が潤って、やっと喋れる気がする。
「…あの、なんで二口が好きな人だって分かったんですか?」
答えにもなっている質問を返す。
まず答えておかないと、こっちの話も出来ないだろうから、ここから進める。
「さくらちゃんは、伊達工の姫でしょ?その姫を、あんな扱いする奴って他に居ないと思ったんだよね」
「最近は、そうでもないですよ。彼氏が出来たと知った途端に離れていった友人が多いです。あそこまで、言われるのは中々無いですけど」
「そういうのは、友人じゃないでしょ。友人なら、幸せは祝うものだよ」
「まぁ、そうですね」
ここで、一旦会話終了。
こっちも聞きたい事はあるのに、切り出せない。
だって、話そうとして目を向けると、それにすぐに気付いて微笑まれる。
顔の良い男が笑顔で私を見ていると思ったら、恥ずかしくて言葉なんか出てこない。
ちょっと見た目が良いからって、これくらいで会話も出来なくなるなんてダメだ。
わざわざ来て貰ったのに、無駄な時間を過ごさせてしまう。
頭を軽く振り、気を取り直して前を見る。
「あの、及川さん」
「何?」
「なんで、私が中学の後輩だって知ってたんですか?」
「だって、試合見に来た事、あるよね?」
確かに、ある。
及川さんファンだった友達に連れられて、無理矢理、だったけど。
でも、目立つような事はしていない。
「まさか、見に来た女の子全員覚えてるんですか?」
「流石の及川さんでも、そこまでは出来ないね。でも、可愛いコは覚えちゃうものだよ」
「私、普通のど真ん中みたいな女なんですが」
いや、寧ろ、及川さんファンのキラキラキャピキャピしたコの傍に居たら埋もれるくらい地味だったと思う。
「可愛いって褒められたんだから、喜ぶとこだよ、今のは」
「学校の誰も見てないのに、お世辞はいりません」
「さくらちゃん、本当に普通なだけのコが、姫扱いされる程、モテるようになると思う?」
「それは、男ばかりの環境で、私以外女が居ないからで…」
「本当に、他に女の子いないの?1人も?それはないよね。バレー部にもマネちゃん居たし」
それを言われると言い返せなくなる。
でも、中学時代にはモテるどころか告白された事すらないし、良い感じになった男子もいない。
信じられる事ではなかった。