第7章 三角形 case4
高校デビュー。
よく聞く言葉であるそれを、まさか自分が実践するとは思ってもいなかった。
だけど、男性の割合が非常に多い場に所属すると、普通程度の容姿があれば、めちゃくちゃモテる。
所謂、オタサーの姫ってやつである。
そして、工業高校というのは、そういう環境。
工業病だっけ?異様にストライクゾーンが広くなる思春期に有りがちなソレを称する、そんな言葉もあるくらいだ。
意図していなくても、高校デビューになってしまう。
入学当初から、私の周りには常に男子。
ちやほやされるのには慣れないのに、同学年に女子は他に数人しかいない上、うちのクラスでは私1人だからどうしようもない。
特に長い昼休みなんか、よく知りもしない男子に囲まれての食事なんて、あまり楽しくはなかった。
だけど、平和な高校生活を維持する為には、笑って過ごすしかないのだ。
こんな時に思い出すのは、中学の時の先輩。
いつも、女子に囲まれていて、誰に対しても平等に優しく笑い掛ける男。
あの頃は、誰にでもイイ顔してる調子の良い男だと思っていた。
でも、こうなってみると、無難にやり過ごす最善の方法とすら思える。
だから、彼を真似て3年間を過ごす事に決めていた。