第5章 ※三角形 case3※
身長、170オーバー。
女の中では、大きい自覚あり。
お陰で学生時代は、スポーツ系の部活から勧誘が絶えなかったのは、今となっては良い思い出。
社会人になってしまうと、この高い身長は、何の役にも立っていない。
寧ろ、上司を見下ろしてしまったり。
高い所の資料とかを簡単に取れたり。
可愛いげが全くなくて、色々と不利になっている。
そんな私に、高校時代から付き合ってくれている彼氏が居るのは、奇跡としか言いようがない。
それが、例え…。
「秋紀、洗面台に見覚えのない口紅があったんだけど?」
「…あ、それ。ほらっ!今度新歓で一発芸やる事になって!」
「じゃあ、この女物のピアスも?」
「そう、それもそうだって!」
「…バスルームに詰まってた、私より明らかに長い髪の毛は?」
「…スンマセンでした!」
人の家で、堂々と浮気をするような男であっても、だ。
秋紀は実家暮らしで、私は一人暮らし。
仕事の都合で支社に出張に行っている間に、合鍵を使っての犯行だった。
家に帰ってすぐから、数々の証拠を見付けて。
久々の部屋デートだというのに、問い詰める作業から入らなきゃならない私の身にもなって欲しいよ。
まぁ、ちょっと問い詰めたくらいで浮気を、あっさり認めて謝ってくるのは…。
「今回は松阪牛ね。すき焼きが良い。」
私が、金で解決出来る条件で許してしまうから。
「さくらは、ホント可愛いげがねぇな。有名なスイーツとかにしろよ。」
すでに笑っている秋紀は、悪いとなんて少しも思っていないのが感じ取れた。