第3章 三角形 case2
嫌だったんだろうと落ち込んで、お守りを下げようとしたんだけど、その端が震える手に掴まれていて出来ない。
「憧れの、手作りお守り!あ、アザっす!大事にします!」
どうやら、嫌だったんじゃなくて、感極まりすぎていただけのようだ。
2人とも、お守りを受け取ってくれて良かった。
安心して、2人を見送れる。
「龍くん、夕くん、春高頑張ってね。2日目からは、私も見てるから。いってらっしゃい。」
中に一緒に入るのは憚られて、この場でお見送りの声を掛けた。
「「はいっ!いってきます!」」
礼儀正しく頭を下げて、バスの方へ向かっていく2人に手を振る。
数日会って無かっただけなのに、その背中は一回り大きくなっているように見えた。
これなら、初日は勝ち抜いて、生で応援出来る2日目はやってくる。
そう信じるには十分な程、逞しい男になっていた。
相手が高校生だとか、まだ子どもなんだって、少し上から2人を見ていた気がする。
だから、夕くんの気持ちを受け入れきれなかったし。
龍くんに対しても本気のアピールをしきれていなかったような…。
2人が、初めて男の子じゃなくて男に見えた瞬間、私の中で何かが変わる。
夕くんに振り向くか、本気で龍くんを振り向かせに行くか。
それはまだ、決めきれないけど。
私の気の持ちようが変わった事で、男の友情と、大人ぶっていた女の、複雑になっていた三角関係にも決着の兆しがみえた。