【イケメン革命】お茶会をご一緒しませんか?〜短編集〜
第6章 天使が悪魔に変わる時【R18】
「「かんぱーいっ!!」」
小気味良いグラスのぶつかる音が店内に響く。
カイル「ぷっはーーー!うめーー!!仕事終わりにはやっぱこれだな!」
カイルはいつものように、ジョッキになみなみと注がれたエールを一気に半分ほど飲み干している。
またいつものごとく、すぐに潰れてしまうのだろうと思ったが今日はそんなことより大切なことがある。
今日は、このむさくるしい酒の席に美しい一輪の花が咲いているのだ。
ーーアリス。
君がいるだけでこんなしがない酒場が、まるで美しい音楽の流れるバーのように錯覚してしまうよ。
「ブランさん?ボーっとしてどうしたんですか??」
オリヴァー「どうせこの万年発情ウサギは一人でいかがわしい妄想にでも浸ってるんだろ。気にするだけ無駄だ」
ブラン「アリス。君に心配してもらえるなんて光栄なことだ。心の奥深くまで君の美しい輝きで癒されるようだよ」
アリスは楽しそうに笑いながら僕の愛の言葉を聞き流すと、なかなかのペースで酒を飲み進めている。
美しいレディの酔った姿は魅力的ではあるが、恐らくそのようなことになれば『彼』にどのような報復をされるかわからない。
ある程度のところで止めなければ…。
ブラン「アリス、もうだいぶクレイドルでの暮らしには慣れたかい?」
「はい!赤の兵舎の方々は親切な方ばかりで、色々と教えて頂きました。それに、エドガーがお休みの時はいつも一緒にいてくれるので本当に助かってます」
ブラン「それはよかった。彼とも順調なようだね」
「ーーはい。ありがとうございます」
はにかみながらもはっきりとしたアリスの答えからは、幸せが滲み出ているようだ。
カイル「順調なんてもんじゃねーぞ、こいつら。兵舎のそこかしこでバカップルっぷりを見せつけてんだからなー」
「ちょっ…ちょっとカイル!?」
カイルはもう出来上がったのか、赤らめた顔で上機嫌に話し出そうとしており、慌ててアリスが止めている。
少し離れて見守りながら、こんな風に戦争に怯えることのなくなった日常が、まだ夢のように思えてしまう。
長い長い年月、常に戦いを記録してきた僕にとってはまだこの平和を『普通の日常』として受け入れられていない…そんなことを改めて感じ、苦笑を漏らす。