第1章 初めてのバイト。
今日は、人生初のアルバイトだ。
2年生になってやっと学校からバイトの許可がおりて、早急に学校から近くて賄い付きのバイト先を探していると見事にすぐに見つかった。
『麺麺軒』、ラーメン屋。
親にはいきなりラーメン屋で大丈夫?と言われたけど、ラーメン屋が良かった。だってラーメン屋すごい好きだから。あと店員さんの制服も。
学校が終わりバイト先に着くと、中に入るのが少し緊張して入り口でもじもじしていると中にいる店員さんがこちらに気づき笑顔で出てきてくれた。
「今日からの子?」
「あっ、はい!立花です!よろしくお願いします!」
「あたしは高嶺雪菜(たかみねゆきな)。よろしくね。」
大学生さんかな。綺麗な人。見惚れている間にも、高嶺さんが一度中に戻って何か持ってくると、はい、とそれを渡された。
「じゃあ着替えよっか。更衣室案内するね。」
「あ、ありがとうございます!」
駆け足で高嶺さんについて行き、更衣室に着く。
「ロッカーはここ使ってね。貴重品とかは店の中で保管するかたちだから持ってきといてね。」
「か、かしこまりましたっ!」
「そんなガチガチなんなくて大丈夫だよ。一人で戻れる?」
「すいません!大丈夫です!」
かわいいなぁと言いながら高嶺さんはじゃあねと言って戻っていった。高嶺さんの方が何百倍もかわいいのに。
渡された制服を慣れないながらも着替えて、荷物をロッカーに入れて貴重品を持ち扉を開けると、ちょうど何かにぶつかった音とともにいたっと声が聞こえた。そしてすぐに遅れて床にカシャンという音も。
「え」
「あ」
扉の向こうには、下を向いたかなり明るい茶髪の男の人と、その目線の先に転がるケータイがあった。
男の人がケータイを拾ってゆっくりとこちらに顔を上げる。
「…っひ、」
「…割れちゃった。」
バキバキに割れた画面を見せて笑う男の人の顔が、ひどく恐ろしく見えて、こう思った。
ヤンキーにぶっ殺される。
顔中の血の気がサッと引いた。
アルバイト初日、いきなり大失敗かましました。