第15章 竜(ドラゴン)の力
『そしてもう一つ…』
八雲が両手を前に出し死柄木と黒霧に向ける。八雲が指を鳴らすと、敵二人の周りに水の竜が姿を現した。それも単体ではなく複数出現し、彼らを鋭い目で睨みつけている。
「あれって、十年前の!」
「あの竜は八雲少女の“個性”だったのか…」
『…どうします?十年前の哀れな敵(ヴィラン)のようになるか、降参するか』
これだけの数の竜に囲まれれば迂闊に動かないはず。だが敵の顔は焦る様子一つ無い。
「へぇー…こりゃ参ったな。確かに俺の“個性”だと相性が悪い。…けど」
「私の“個性”の事をお忘れのようですね」
黒霧が八雲の背後を取る。しかし黒いモヤが自分を覆うとしているにも関わらず、こちらにも焦る様子一つ無い。むしろ安堵の笑みを浮かべている程だ。
『忘れてなんかないよ。だって…』
_バン!バン!
周りに銃声が響き、銃弾が黒霧と死柄木の体を掠める。その方向を見れば、数人の男女の姿がある。
『ヒーロー達が来てくれたから』