第14章 敵との戦い(2)
「死柄木弔」
「黒霧。13号はやったのか」
「行動不能には出来たものの散らし残した生徒がおりまして…一人逃げられました」
「…………は?」
広場では死柄木と黒霧を残して他の敵(ヴィラン)は全滅していた。その原因である相澤は、対オールマイト用の兵器_脳無(のうむ)と呼ばれる怪物に倒された。顔を思いきり地面に叩きつけられたため、顔が見るも耐えない無残な姿になっている。
飯田に逃げられた黒霧はその事を報告しに死柄木の所へ行った。
それを聞いた死柄木は深いため息をつく。
「は───…黒霧、お前、ワープゲートじゃなかったら粉々にしてたよ…」
「流石に何十人ものプロ相手じゃ敵わない。ゲームオーバーだ。あーあ…今回はゲームオーバーだ。帰ろっか」
諦めたように首を振りながら呟く死柄木。その様子を静かに観察する緑谷達。
「……?帰る…?カエルっつったのか??」
「そう聞こえたわ」
「やっ、やったよ!助かるんだ俺達!」
嬉しそうな峰田に反して蛙吹と緑谷の顔色は晴れない。
「ええ。でも…気味が悪いわ、緑谷ちゃん」
「うん…これだけの事をしといて…あっさり引き下がるなんて…」
「(オールマイトを殺したいんじゃないのか!?これで帰ったら雄英の危機意識が高まるだけだぞ!!ゲームオーバー?何だ…何考えてるんだあいつら!!)」
相手の手の内が全く読めない緑谷達。その時、今にも帰ろうかという態度の死柄木がふと思い付いたように呟く。
「あ、そうだ。帰る前に平和の象徴としての矜恃(きょうじ)を少しでも__へし折って帰ろう!」
死柄木はいつの間にか蛙吹の目の前に移動し自身の手で顔を鷲掴みしようとする。
その動きはあまりにも素早く、隣にいた緑谷にはまるでスローモーションのように見えた。
死柄木の手が蛙吹に触れる、その瞬間__
『_私の友達に、その汚い手で触らないで!!』