第3章 これからの事
百(もも)のお付きのお爺さん…もとい爺やに説得させられた私は、百の家である大豪邸に来ていた。
『大きいお家ですね…』
「ええ、何しろ八百万家の私有地は広いですから。迷子にならぬようお気をつけ下さい」
屋敷の中へ入ると、黒髪の女性がパタパタとスリッパを鳴らしてこちらへ向かって来た。
「貴女が百を助けてくれた方ね?初めまして。百の母です」
『八雲暁です。こちらこそ、家に招いていただいてありがとうございます』
「まぁ、なんて礼儀の良い子なの…」
そう言って百のお母様は目を潤(うる)ませる。いえ、むしろ百の方が礼儀作法が良いと思います。だってあの子、自分の靴だけでなく私の靴も揃えてくれていたり、今もメイドさん達に指示を与えている。私の泊まる部屋を手配してくれているらしい。
『(そこまでしてくれなくても、当然の事をしただけなのになぁ)』
でも、ここまでしてもらって置いて断るのは流石に無礼千番なので黙っておく。人の好意は素直に受け止めておこう。
そう思い、彼女等と一緒に夕飯にありつくのだった。