第12章 敵との遭遇
私は驚いて思わず思考を止めてしまうところだった。それ程の爆弾発言をかました張本人は面白そうに私を見る。
『何が目的!?それに、そんな事をすれば先生達が気づくはずよ!』
「そんなおっかない顔すんなよ、すぐ連れてってやるから。黒霧」
「…本当に良いのですか?このような少女を…」
「ああ。こいつには聞きたいこともあるしな」
「承知しました」
『何を__きゃっ!?』
突然真後ろにあった人の壁が無くなった、と思った瞬間。私は後ろへ引きずり込まれ、重力の流れに逆らえず倒れ込めば見知らぬ場所に来ていた。
一見みたところ、酒場のBARのように見える。ここがさっきの二人のアジトなのだろうか。
周りを見回していると掌をくっつけた青年が戻ってきた。目の前には黒い霧が等身大の大きさで現れており、ワープゲートのような役割を果たしているのがわかった。
彼が黒い霧から出てくると、その霧は小さくなり消えていった。代わりに霧の向こうにいた人物が現れた。服を来ているが、顔や手が全て黒い霧で出来ている。彼が“黒霧”という男だろう。
『何のために私をここに?』
私は相手を警戒しながら問いかけた。黒霧は特に反応を起こさなかったが、もう片方の彼は楽しそうに答えた。
「もちろん、お前をこちら側に勧誘するためだよ。今朝見てたけど、幻影を作り出せるなんていい“個性”はヒーローには勿体ない」
『こちら側…つまり貴方達は“敵”というわけですか』
相手が敵なら私を攫った理由も納得出来る。幻影上手く利用すればヒーロー達に気付かれずに堂々と活動できる、という事だろう。
『こんな所にまでお招き頂き、更に勧誘なんてしてくれて大変申し訳ないのですが…私はそちら側には行けません!』
実際、申し訳ないなんて微塵も思っていないのだけど。
私は大気中の水を集めて水の球体を作ると、彼等をその中に閉じ込めた。
『…“水流拘束”(ウォーターロック)』
ふと、同じ系統の魔法を使う女魔導士が思い浮かぶ。彼女から教わっておいて本当に良かった。