第9章 初めての実践
「貸して」と言われて素直に従う相手でもないので、問答無用で右腕を掴む。
掴んだ瞬間、彼は一瞬怯んだ。やっぱり負傷してたか…。原因は言わずもがな、今日の戦闘訓練だろう。
『モード《天竜》』
出久君の時と同じように、彼の右腕に治癒魔法をかけていく。最初こそ私の手を振り放そうとしていた爆豪君だが、諦めたのか大人しく治療を受けている。
『…なんでリカバリーガールの所に行かなかったの?』
「…どうしようが、俺の勝手だろうが」
態度こそ大人しいものの、表情は険しい。「先生に頼らない」という彼のプライドか、それとも…
『出久君がいるから、行きたくなかったとか?』
「!…チッ」
舌打ちをする爆豪君。どうやら当たりらしい。
頼る事も大切なのに…そう思いながら治療を進めていく。
『こんな感じかな…今日はもう“個性”を使わない事!…と言うより、普段から控えた方がいいよ。さもないと…手、使えなくなるよ』
この後に出久君の治療もやるので、爆豪君の右腕は応急処置で済ませた。彼も馬鹿ではないし、自分の体の事はちゃんと考えれるだろう。
一応、忠告はした。さあ、次は出久君の所に行かないと…
『腕、お大事にね。それじゃ!』
「…おい」
『?』
私が通り過ぎようとすると、左腕を掴まれた。彼を見上げると、私の目をしっかり睨みつけて、彼は言った。
「てめーのそれ、本当に“個性”か?」