第2章 目が覚めると
『…ん…』
どうやら私は眠っていたらしい。そっと瞼を開けてみると、そこは…
『え…⁉』
私は急いで起き上がり周りを見渡す。
狭い道、所々にあるゴミ袋、それに群がる鴉…
『路地裏…?』
真っ先に思いついた場所の名だった。
『とにかく、周りが見える所に行かないと…状況が掴めない』
何故私は路地裏で倒れて眠っていた…?その謎は後回しにして、ここはどこなのか把握しないといけない。
そう思い、走って路地裏を出てみる。すると大勢の人だかりが見えた。
何事かと思い、そちらへ足を運ぶ。すると人の話し声が聞こえてきた。
「…おい、聞いたか?あそこにいる敵(ヴィラン)の事…」
「…なんでも、元ヒーローらしいな…」
「…ヒーローが敵(ヴィラン)に寝返るなんて、あり得ないわ…」
人だかりの向こうには、野次馬達を守るように立つ変わった服装の人達。おそらく“ヒーロー”と呼ばれる人達だろう。その人たちと向かい合うように反対側にいるのは…
『あれが…敵(ヴィラン)?』
黒っぽい服装をした男性がいる。片方の手には炎を宿らせ、もう片方の手は幼い少女の首を掴んでいる。
「お前ら動くんじゃねぇぞ‼動いたらこいつがどうなるか分かってんだろうなぁ⁉」
「くっ…人質なんて卑怯な!」
もし誰かがあの男を捕らえるために動いたら、あの少女には一生消えない傷が残る。無論、誰もそんな事はしたくない。だからこそ誰も動けないのだ。
『なんて奴なの…』
私は昔からこういう奴らは許せない質だ。
『今、動く事ができるのは私だけ…』
あの男に制裁を与える為に、あの少女を救う為に、私は動いた。