第16章 戦いの後で
「17…18…19…20。両脚重症の彼と意識不明の彼女を除いて、後はほぼ全員無事か」
敵連合と名乗る集団も消え、一段落したUSJ。その出入口付近では、現場に到着した刑事・塚内直正が生徒達の安否確認をしていた。
塚内が生徒達を教室へ戻すように指示を出していると、おずおずと蛙吹が質問をする。
「刑事さん。相澤先生は…」
「両腕粉砕骨折、顔面骨折…さらに眼窩底骨(がんかていこつ)が粉々になりかけ、危うく目に後遺症が残る所だったよ」
「なりかけ…?どういう事かしら」
「ああ、実は…」
塚内によれば…なんと、相澤の怪我はほぼ完治に近い状態だと言うのだ。怪我は“なりかけ”より“治りかけ”の方が正しいとも言えるらしい。
また、13号も同じ様で、背中から上腕にかけての裂傷が酷かったようだが、今は着々と回復に向かっているとの事。
緑谷も先程、両脚重症と言っていたがそれもほぼ完治しているらしい。今はオールマイトと共に保健室にいるようだ。
「まるで奇跡だ、と検査した人達も感心の声をあげていたよ。君達の中に治癒系の“個性”を持つ子でもいるのかい?」
「それは多分、あれのおかげだと思います」
塚内の質問に答えた尾白がUSJの中を指で指す。そこには今でも穏やかな風が吹いており、時おり生徒達の髪を揺らしていた。
「あれ、暁ちゃんの“個性”やんね…もう怪我した人おらんのに、まだ消えてへん」
麗日がぽつりと言葉を落とす。
確かに彼女の言う通り、あの風のおかげで皆の傷や体力は回復した。それでもあの風は未だに生徒達を、その心を癒すように吹いている。
「…まるで、「元気出して」って言われてるみたいね…暁ちゃんらしいわ」
「そうだ、塚内刑事!暁君は!?」
麗日に引き続き蛙吹も呟くと、飯田が切羽詰まった様子で塚内に問う。