第4章 インターハイ
カラカラ、、、、
俯きアスファルトを見つめる荒北の耳には、もう動かないペダルに空回りするタイヤの音だけが聞こえていた。
「ハァ、、、ハァ、、、」
スプリントラインを越える時、観衆の後ろの方に小さな黒髪が見えた。
ハッ、アイツにはカッコ悪ィとこばっか見られてんナ、、、
んな不安そうな顔してんじゃねーよ、バァーカ。
大丈夫だ。ゴールは新開達が取ってくンだろ。
っつーか、やっぱあの金髪頭は来てねーのか、、、。
今度会ったら文句の1つでも言って、、、
っつーか、、、今度こそ、地面が近、、付いて、、、
フラフラと荒北の自転車が傾く。
「キャー!倒れるわよ!!」
うっせーな。ンなこと、分かってんだヨ、、、
ケドもう、、、動けねぇ、、、、
荒北は諦めたように目を閉じた。
ガシャン!!!
自転車は大きな音を立てて倒れた。
そして荒北は
フワッ
固い地面に落ちる覚悟をしていたが何か柔らかいものに包まれた。
なんか、、、いー匂いだナ、、、。
朦朧とする意識の中で、目を開けると目の前は真っ白だった。
ア?俺、死んだのか?笑
これって、天国ってやつか?
天国ってこんな気持ちいいんだナ。
なんかふわふわで柔らけーし、あったけーし、、、
すっげー落ち着く、、。
「、、、北。、、、荒北!」
意識を失いかけた荒北の耳に聞き覚えのある声が聞こえた。
声のする方を見上げると、綺麗に化粧をした沙織がいた。
ハ?何だコレ?
何で天国にテメェがいんだヨ。
せっかく気持ちいい夢見てンだから、もっとこう、色々あンだろ?
南ちゃんとか晴子さん的なやつだよ。
もっと夢見ろよ、俺。
ケド、、、
その、なんつーか、、、馬子にも衣装にも程があるっつーか、、、
いつもと違って、そういう顔真っ赤にして余裕ないトコとか、涙流して目うるうるさせるとか、
いくら夢とはいえ、、、
、、、反則じゃね?
「ハッ」
荒北は力無く笑い、沙織の目を見て言った。
「綺麗だナ、、、お前」
そして荒北は驚く沙織の顔を見ながら目を閉じた。