第4章 インターハイ

「後方にいた箱学、総北の選手も先頭に追いつきました！これで箱学、総北は全メンバーが揃ったようです！二校の後ろには京都伏見が付き、この三校の中から今年の優勝者が出ることになるでしょう！！」

「フゥー。全員揃ったし、荒北もこれで後方で休めるだろ」
「そーだな！あれだけの仕事をしたんだ。スプリントラインは他のメンバーに任せて休んだ方がいい」

そうだ、荒北。
よくやったよ。今はゆっくり休め。

「しかし、2人しかいない京都は置いといたとして、総北もフルメンバーか揃ってる。今のところペースに差も無い様だし、かなり厳しい戦いになるぞ」
「だろうなー。そろそろ差を広げておきたいところだよなぁ」

箱学、、、頑張れ！
沙織は祈るような気持ちだった。


「と！スプリントラインまで残り1.5キロ！ここで新開選手が出ました！！後ろにはエース、福富選手を連れています！！このままゴールを狙う気でしょうか！！」
「おぉ！新開！！箱学はエーススプリンターを出して、一気に差を広げる気だ」

新開、お願い。頑張って。
沙織の脳裏にフラフラになりながらローラーを回す荒北の姿が浮かんだ。


「しかし総北も負けていません！田所選手もエースを率いて出ました！新開選手に追いつきます！」
「マジか！全然差が広がらねーじゃん！このレースどうなんだよ！」

荒北の顔から汗が流れ落ちる光景が浮かんだ。
なぁ、荒北。
アンタ、もうフラフラなんだろ？
だったら絶対出ない方がいい。


緊迫したレースに対して観客達は大いに沸いた。
しかしそれに反して沙織の周りだけは膜が張っているかのようにやけに静かだった。
そのせいか沙織には自分の心臓の音がやけに大きく聞こえた。

ドクン、ドクン
何だよ、静かにしてろよ心臓。
嫌な予感？そんなのしないよ。
だってアイツは私と違うんだから。
大丈夫。ちゃんと分かってるはずだから。

そうでしょ？荒北。
私はここを颯爽と走り抜けるアンタを見たいんだよ。
エースの後ろからゴールをくぐって、思いっきり笑うアンタを見たいんだよ。

、、、そしたらさ
思いっきり冷えたヤツ、買っとくからさ。
一緒に飲もうよ、ベプシ。
炭酸なんて嫌いだけど、そん時だけは美味しく飲める気がするんだよ。
だからさ、、、