第4章 インターハイ
沙織は巧に言われた通り、旗が立ち並ぶ方向へと急いだ。
窓越しに手を振ったとき、太陽の光が窓に反射して巧の顔はよく見えなかった。
でも、たぶん、笑ってたよな?
巧はそういう人だ。
きっと、これまでのシツコイくらいの行かないでは今日の為の布石だったに違いない。
本当に人が悪いよな。ちゃんも教えてくれてたら、こんな格好してこなかったのに。
オシャレして着てきた白の長いワンピースとサンダルが急ぐ足には煩わしい。
でも、、、大成功だよ。
レースが終わったら冷たいジュースを買って車に戻ろう。笑って「お待たせ」って言うんだ。
コースに着くと照りつける日差しの中、たくさんに観客が選手の到着を待っていた。
良かった、、、まだ来てないみたい。
沙織は息を切らしながら、コースのギリギリまで歩み寄る。
ここは、、、どこだろう?
「ねーねー、スプリなんとかはまだー?」
隣にいたカップルの話し声が聞こえた。
「スプリントリザルトラインな!もう少し前なだけだから頑張って歩こうぜ?」
「ここでも見えるじゃんー」
「ばかだなー。最終日とはいえ、そこを1番で通過した奴は表彰されんだぜ?重要な場所なんだよ!見ておかないと損だろー」
「えぇー!もう疲れたよー」
スプリントリザルト、、、確か佳奈が待機してる所だったっけ?
重要な場所、、、私も行くか。
いやでも、佳奈に嘘ついた手前、会いづらい、、、。
迷っている沙織の耳にレース状況を知らせるアナウンスが聞こえてきた。
「えぇ、ただ今入ってきた情報によりますと、、、」
よし、ここでも状況は分かる。私はここで待とう、、、。
「何と、後方集団が異様な追い上げを見せ、先頭集団にいた箱学と千葉総北の選手を一部飲み込んだそうですね。その選手は、、、箱学荒北選手と真波選手、そして総北の、、、」
は?、、、、荒北!?
沙織は汗を拭こうと取り出したハンカチを地面に落とした。
ハァ!?アイツまじで何やってんの?
後方集団に飲み込まれるとかモブなの?
「おぉ!集団を出て広島が前に出たそうです!このまま先頭を狙うんでしょうか!3日目誰も予想していなかったことが起きるんでしょうかあ!!」
沙織は開いた口が塞がらなかった。