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隣の彼は目つきが悪い【弱虫ペダル】

第4章 インターハイ


インターハイのスタートへ向けて箱根学園の選手たちは歩いていた。
「キャー!箱学よー!」
「すっげー!」
「カッコイイー!!」
昨年の王者、彼らが歩くだけで沿道の観客が湧き、カメラが光った。
「おぉー!今日の声援は一段と凄いな!」
と東堂が喜ぶ。
「主に女子の俺への声援だな!」
珍しく新開もそれに乗っかる。
「ウッゼ!!」
すかさず荒北は悪態をついた。
たしかに昨日の新開の活躍はめざましかった。
その勝利に素直に荒北も喜んだのだ。
「拗ねるな、荒北!お前を応援する人も2、3人いる!もちろん女子ではないがな!」
「うっせー!拗ねてねぇ!そんなの関係ねぇんだよ!勝ちゃいいんだ勝ちゃア!」
調子に乗る東堂に噛みつき、荒北は睨むように沿道を見回した。
フラッシュの光るカメラや黄色い声援を送る女子達は苦手だったので余り見たくはなかったが、つい探してしまうのだ。

「あ、岩元さんだ!」
ふと新開が手を振った。
その視線の先を見ると、新開に手を振られアタフタする佳奈がいた。
「えっと、、、新開くん、荒北くん、頑張って!!」
声は小さく聞こえなかったが、口の動きでそう言っているのが分かった。
「おぅ」
佳奈の声援に新開が手を挙げて応えた。
荒北も無言で拳を上げた。
それを見て佳奈が満足そうに微笑む。
ったく、何しちゃってンだヨ、俺ァ。
応援に応えるなんてどーかしちゃったんじゃナイ?

「沙織ちゃんは来てないなぁ」
隣で新開が呟いた。
「そーだナ」
その名前に荒北はあの晩、休憩室で月の光の中で楽しそうに笑う顔を思い出した。

まぁ、あの顔は悪くなかったナ。
、、、、ハッ!
バァッカ、俺。やっぱどーかしてンだわ。
っつーか、あンの野郎、他人には絶対勝てなんて言っておいて、自分は寝てンじゃねーだろうなァ。
、、、別に応援してほしいなんて、思ってねェけどよォ。

そんなことを考えて荒北は再び沿道から目を逸らし、スタートラインへ向かっていった。
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