第4章 インターハイ
休憩室は男子寮と女子寮のちょうど間にある。寮の規則では21時以降は行ってはいけないことになっているが、沙織はそんなことを守ったことはない。
電気をつけるとばれてしまうので、電気のスイッチは押さずに休憩室へ入る。
数台のベンチが並ぶ小さな部屋だ。自販機へとまっすぐ進む。
ふと、人の気配がした。誰も居ないはずなのにと恐る恐る後ろを見ると、荒北がベンチで眠っていた。
は、、、?何で?
荒北は壁にもたれる形でスヤスヤと穏やかな顔で眠っている。
沙織はそれを見て顔を歪めた。
あー、今一番見たくない顔なのに。
、、、早よ、帰ろ。
沙織はジュースを買ってサッサと帰ろうとした。
アイツのせいで私は今苦しんでるんだ!
なのにあんなに気持ち良さそうに寝やがって。
ドンドンと大きな足音を立ててドアの前まで進み、止まった。
足音立てても起きないなんて、熟睡しすぎだろーが!
そういえば、明日からインターハイなんだよな、、、
こんなとこで寝てて走れんの?これ、このまま朝まで寝るやつじゃん!!
、、、
、、、、、
あー!!もうっ!バカ荒北!!
ピタッ
「うわっ!冷たっ!」
頬にジュースを当てると、荒北はビクッとして目を覚ました。
「おはよ、、、」
荒北が上を見上げると不機嫌そうにそっぽを向いた沙織が立っていた。
「何だヨ、、、ビックリしたじゃねーか」
「、、、うるさい。アンタがこんな所で居眠りなんかしてるからだろーが。はい、これ眠気覚まし」
沙織は先ほど荒北の頬に当てたジュースを手渡した。
「おっ、ベプシ。気が利くじゃナァイ」
荒北は嬉しそうに蓋を開けて飲み始めた。
沙織はその様子を自分のジュースを飲みながら見下ろした。
恐らく風呂上がりなのだろう。Tシャツに半パン姿の荒北の腕や脚には所々にかすったような傷があった。
練習でついた傷かな、、、
その腕や脚は近くでみると意外と太さがあり、逞しく鍛えられていた。ふと、沙織は荒北のTシャツに赤いシミを見つけた。