第4章 インターハイ
「あぁー!!もうっ!」
自転車競技部のインターハイを翌日に控え、沙織は寮の自室のベッドに飛び込んだ。
「うぅ」
唸り声とともにゴソゴソとスマホを取りだす。
画面にはメッセージが2件。
佳奈「明日からインターハイだよ!とりあえずクラスの子と行くことにしたけど、沙織ちゃんも気が向いたら来てね!場所は、、、」
巧「明日からインターハイだね。沙織がどうしても行きたいなら止めないけど、僕は泣いちゃうよ、、、えーん」
見るなりスマホを投げ捨て、枕に顔を埋める。
佳奈には沙織が行かないと断り続けた甲斐あって、クラスの子と行かせることに成功したが、まだ沙織と見ることを諦めていないらしく、詳しい日程とコースを書いたメッセージが来た。
どうやら荒北から、新開がゴールを取るであろう場所を教えてもらったらしい。佳奈はとても張り切っていた。
「あンのブスっ!余計なことを、、、」
沙織は荒北の顔を思い浮かべ、枕を殴った。
そして巧は、あの日以来インターハイに行くなとしつこく言ってきた。沙織は行かないと何度も言っているのにだ。そして先ほど、ダメ押しのメッセージが佳奈のメッセージとほぼ同時に届いた。
沙織は巧にこのネタで遊ばれていると薄々感じてはいたが、冗談めかしていてもたまに真面目な目をしている所を見ると、巧は多分本当にインターハイを見に行ってほしくないようだ。
そうであれば無理矢理にでも沙織のバイトのシフトを明日からの3日間全てに入れればいいのに、他の人との兼ね合いで3日目だけ休みになっていた。
あくまで沙織の意思を大切にしたい。巧のそういう所がまたズルい。
投げ捨てたスマホの画面をもう一度見て沙織はため息をついた。
「ハァ、、、ジュースでも買いに行くか」
気分転換に沙織は自販機のある休憩室へ向かった。