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隣の彼は目つきが悪い【弱虫ペダル】

第3章 夏は夜


「お姫様に応援されたら、誰よりも速く走れそうだろ?」
ふと新開の言葉が頭の中で響く。
あぁ、新開。そうかもナ、、、。
だけど、荒北は知っていた。

「どーせ、新開のことでも見てたんだろ?」
「なっ!何で、、、っ」
わかるのかって?
佳奈は顔を真っ赤にしている。
そんなの誰でも分かンだろ?

新開の腕の中で、まっすぐ新開を見つめる瞳。
時々、沙織に会いにきては、チラチラと新開を見ては赤くなる横顔。

「んなの、小学生にでも分かンだろーが」
佳奈から目を逸らして前を向くと、日が沈みすっかり暗くなった空にはいくつか星が光っていた。
一瞬、佳奈が恥ずかしそうに俯くのが分かった。
しかし佳奈はすぐに顔を上げると、照れたように笑った。
「あはは、荒北くんはズルいよ。何でも話しやすいから、つい口が滑っちゃう」
どうやら、佳奈はさっきの一言でそこまでバレたと思っているらしい。
やっぱ自覚はないんだナ。
「新開くんが好きなの。1年の時からずっと」
そう言って佳奈は荒北を見て微笑んだ。
「ふーん」
ったく、やっぱりコイツはバカだ。
荒北は立ち止まった佳奈を置いて歩き出す。
「あ、荒北くん、待って!」
すぐに佳奈は荒北に追いついて、隣を歩く。



「あ!蛍!」
突然、佳奈が林の方へ駆け出した。
「こんな所に蛍なんているわけねぇだろ」
「今、ぜったい光ったよ!一緒に探そうよ!」
佳奈は無邪気に笑った。

そういう顔は、俺なんかにじゃなくて、
新開に見せるモンだろーが、、、

「フゥー」
荒北は小さく溜息をついて、佳奈の元へ向かった。
「俺は虫が嫌いなんだヨ!早く行くぞ」
「蛍は虫じゃないよ」
「虫だヨ!!バカか!」

言いつつ一緒に蛍を探してしまう自分もつくづくバカだと思う荒北だった。
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