第3章 夏は夜
梅雨が明け、暑い暑い季節がやって来ようとしていた。
「次っ!」
ピッという笛の音に合わせて、生徒達がスタートを切る。バシャバシャという音に合わせ、水しぶきがあがった。
荒北靖友はプールサイドでイライラしていた。
「フゥっ!疲れたー。靖友!何でそんなにカリカリしてんだ?」
泳ぎ終わった新開が水を滴らせながら肩を叩いた。
「この水泳っつーのはイマイチ性に合わなねぇんだよ!何で他人が泳いでるのを、こうしてじーっと眺めてねぇといけねンだよ!」
「うーん、それは考え方次第じゃねーかなー」
「ハァ?」
新開がニヤリとした。
「ホラ、あそこ見てみろよ。普段見られない女子達の水着姿を拝むってのも、有意義な時間だと思うぜ?」
そう言って、これからスタート位置に移動する女子達を顎で指した。
「っ!バァカ、テメェっ!誰がそんなもん見るかっ!!」
荒北は急いで目を逸らした。
「なになに?女子の話?」
すると、近くの男子達も話に入ってきた。
「荒北もあーゆーの見たいんだ?」
「ハァ?俺は、、、興味ねーよ!」
「靖友、強がりはよせ!」
「そーだそーだ!健康に悪いぞ?」
「ウッセ!!テメェら、どつくぞ!コラァっ!」
「ははは!」
沙織は荒北の周りで騒ぐ男子達に気づいた。
アイツら、何騒いでんだ?
この頃になると、新開の周りのメンバーが荒北とも話すようになっていた。
まぁ、アイツは見た目ほど悪い奴じゃないし。
自転車、頑張ってるし、、、。
沙織はチラっと荒北を見た。
インターハイか、、、。
今年も荒北と新開が所属する自転車競技部は、インターハイに出る。そしてそのメンバーに2人とも入っているという話が沙織の耳にも入っていた。