第10章 冬はつとめて
ガバッ!!
「荒北ッ!!」
勢いよく起き上がった沙織は、思わず叫んだ名前にハッとして、静かに口を抑えた。
「ハァ、ハァ、、、夢?」
ドキドキと心臓が痛いくらいに動いていた。
額には変な汗が流れる。
「ん、固い、、、」
柔らかいハズのベッドなのに自分の手が触れた何かは固くて目を瞬かせると、目の前にはすっかり熱くなったパソコンがあった。
そして明々とヒステリックな光を放つそれには、頭が痛くなるほどの数字の羅列。
それを眺めながら沙織はボーッとする頭を整理した。
あ、そうか、私、、、合格発表を見てたんだ。
「って!!まさか!!」
沙織はガバッと起き上がると、パソコンの画面を必死で覗き込んだ。
クシャクシャになった受験票と交互に見る。
何度も視線を行き来させて、沙織は目を閉じた。
見間違いじゃない。
沙織は小さく息を吐いて、再びベッドに仰向けになった。
「夢じゃ、、、なかったんだ」
そう呟いて沙織は脱力するように右腕で顔を覆った。
すると再び少しずつ寝落ちしてしまうまでの記憶が蘇った。
何度も探した番号は、冷ややかな光を放つ画面の中には結局見つからなかった。
そうだ、私、それを見て。
学校に行って、アイツに会って、ちゃんと言わなきゃって、、、思ってたのに。
沙織は全て思い出した。
石のように重くなった身体は動かなかった。
動かす気力もなかった。
そしてそのまま眠ってしまったらしかった。
思い出すと同時に鼻の奥がツンと痛んだ。
時計を見ると、針はすでに昼前を指している。
「行かなきゃ、、、」
沙織は今思ったその気持ちを逃さないように口に出してから立ち上がると、サッと荒北からもらったマフラーを手に取った。