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隣の彼は目つきが悪い【弱虫ペダル】

第1章 春はあけぼの


教室に着くと沙織は自分の席を確認した。
教室の1番奥、窓際の席の隣。

はぁ、ダルっ。なんで窓際じゃないんだよ。

沙織が教室に入ると、それまで騒がしかった教室が一瞬静かになった。そして沙織が席に着き、うつ伏せになると少しずつザワザワする音が大きくなった。
「うわ!荒北と香田と一緒かー。このクラス大丈夫か?」
「荒北と香田とか、くっつけていいのかよ」
「香田さん怖いー。でも、荒北くんも怖いらしいよ」
そんな声が聞こえるのもいつもの事だ。しかし今までと1つ違う事がある。これまでクラスで怖がられるのは沙織1人だったが、今年はどうやらもう1人、自分と同じような奴がいるらしい。

アラキタ?誰だそれ。

しかし朝の彼女にそれ以上の事を考えるだけの元気はなく、すぐに眠りにつこうとした。
春は花粉も飛ぶし、まだまだ寒い時もある。体調を崩しやすい季節だったので、沙織は春があまり好きではない。かと言って、好きな季節があるわけでもなかったが。ただ、この日は何となく気持ちよい風が吹いていた。
沙織がウトウトとし始めた時、突然隣の席でガタガタガタガタっと派手な音が鳴った。

うるさいな、、、誰だよ

眠い目をこすりながら隣を見る。すると、短くサラサラの黒髪に細い肩の男子学生が、窓の方を見て「チッ」と舌打ちをした。
春の朝日に照らされた黒髪がキラキラと光って、沙織は綺麗な髪だなと何となく思った。
そして彼女はまた眠りにふける。隣の席から制汗剤の香りに混じって、ほのかに汗の匂いがした。沙織はその匂いが嫌いではないなと思った。
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