第8章 秋は夕暮れ②
荒北が去っていった後も沙織はその場で立ち尽くしていた。
目の前では夕陽が今にも沈みそうになって最後の光を放っている。
「もうすぐ暗くなるな、、、」
そう呟いてそして気がついた。
「あれ、おかしいな、、、」
いつもならこの時間、耳をつんざくほど五月蝿い椋鳥が鳴いていない。
いつも勉強してても五月蝿くてイライラするのに。
、、、そういえば今日はアイツと話してる間もずっと鳥の声なんか聞こえなかった。
「、、、お前のことが好きだから」
、、、どうして今日はこんなに静かなんだろう?
「、、、ごめん」
「そーゆーの、今は、、、考えられない」
ふいに自分の放った言葉が心に響く。
荒北はあの時どんな顔をしていたのだろう。
恥ずかしくて見ることはできなかった。
本当に、本当に嘘じゃないんだろうか。
断ったのは自分なのに、、、
どうしてこんなに、、、
「そンじゃな、、、」
そんなアイツの言葉が寂しいだなんて
思うんだろう、、、
鳥の声はしないのに沙織の耳には荒北の掠れた声が残って、
「あー、、、うるさ、、、」
なんだかひどく痛かった。