第8章 秋は夕暮れ②
クッソ、またかヨ、、、。
教室に入るなり荒北は顔をしかめた。
アイツら、何楽しそうに話しちゃってンのォ!?
それはこの席になってから毎日のことだった。
なぜなら、登校するなり新開が沙織に話しかけているからだ。そして沙織も何だかんだそれに応えており楽しそうだった。
ガタン!
ワザと大きな音を立ててカバンを置く。
少しでもこちらを見ないだろうか、とチラリ後ろの席を窺うも、沙織は話に夢中で全く気付かない。
「チッ、、、」
荒北は舌打ちをして席についた。
軽いノリで話に割り込めばいいとも思うが、そんなキャラでもない自分がどんなノリで入っていけばいいかも分からなかった。
席に着くなり大きな溜息が出た。
「あー!荒北くん、おはよう!」
その甲高い声を聞いて、荒北は再び溜息を吐いた。
大きな音を立てて置いたカバンのツケがやってきたのだ。
「、、、はよ」
荒北はできるだけ無愛想に答え、カバンから赤本を取り出して、すぐにそれに意識を集中させた。
それ以上話しかけんなよオーラをできるだけ多く身に纏う。
これもここ最近、ほぼ毎日相手が変わるというだけで繰り返されていたことだった。
しかし、相手はそんなこと全くと言っていいほど気にしない。
「ねーねー、荒北くん!こないだの話、考えてくれた?」
「、、、、」
「ねー?」
「、、、、」
「荒北くん、聞いてるー??」
「、、、、」
「おーい!!」
「、、、ッ!」
こういう事に関しては相手の方が何枚も上手なのである。
「何だヨ!うっせーな!」
痺れを切らした荒北はつい返事をしてしまった。
「ねぇ!そんなこと言わないでさー」
結構な声で怒鳴ったのにもかかわらず、その瞬間向けられるニッコリとした愛嬌たっぷりの笑顔。
ぐっ、、、コイツ、、、。
クラスで人気の高いのにも思わず頷くその笑顔に、荒北は一瞬怯んだ。