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【Fate・FGO】施しの英雄

第3章 侵攻


アトラム・ガリアスタ……それが憎み続けた仇の名だった。中東に居を構える魔術師一族の頭首で、魔術師にしては珍しく科学技術に理解がある奴だった。反対に私の父は魔術に理解がある技術者だった。
金銭面のバックアップを受けていたとは言え、父が3年間心血を注いで完成させた詠唱効率化のシステムは、いつの間にかアトラム一人の功績となっていた。


父は反発したが家柄も金もあるガリアスタ家になんの後ろ盾の無いただの技術者が勝てるわけもなく、邪魔になった私の家族はみんな殺された。まるで最初からそんな人間など居なかったかのように、存在ごと揉み消された。


冬の短い夕暮れが朱く染めた街を歩きながら、私は全てを話した。


意外な事に彼が述べたのは、私を思い遣るような言葉だった。

「辛い話を思い出させてしまったな」

人目を引かないよう霊体化という不可視の状態になっているカルナの声は、空気を介さずストレートに脳に響いた。
その気遣いがこそばゆくて、コートのポケット中でかじかむ指先をグーパーした。

「その道がたとえ悪だろうとも、マスターに曲げられない信念がある以上、オレはそれに殉じ槍を振るおう」

「……そんなこと言ってくれるとは思わなかった」

あの日の憎しみを消さぬよう、復讐の炎を絶やさぬよう、ずっと一人で孤独に生き延びてきた。それがサーヴァントの言葉一つでこんなにも安堵するなんて。
彼は……彼の魂は、紛れもなく人を救わんとするものだった。


ありがとう、と喉先まで出かかった言葉を寸前で飲み込む。

ここに居るのは何故だ?それは他人と馴れ合う為じゃない。
私が今から臨むのは、殺すか殺されるかの戦争だ。


「戦果を……期待しているよ、ランサー」




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