第4章 波乱
まずい。
まずいまずいまずいまずい!!
1人でも敵う気しないのに、あんなのと2対1になったら死ぬしかないじゃん!!
「ランサー、まともに話を聞いちゃダメ!こんなの罠よ!罠ッ!!」
今ここで裏切られる訳にはいかない!例え令呪を使ったとしても!最悪の事態を想定して令呪の刻まれた左手首を掴む腕に力が篭もる。
「何を勘違いしている、マスター」
「え?」
血走った目をした私を冷静な青い眼差しが見つめる。
「マスターの魔力は確かに乏しい。だがそんな些末な事、オレが裏切る理由には成り得ない。そして何よりこの魔力はオレの身体に良く馴染む」
「……良く、馴染む?」
「ああ、離れ難い程にな」
こんな状況でもなければ照れてしまうようなセリフをさらりと言ってのける。
バカなの?バカルナなの?
そういう事はさっき言えっ!!!!
「……まぁ結果は元からわかってたわ。見るからにアナタ、頭固そうだものね」
ランサーは悔しげに口元を歪めるキャスターに向き直る。
臨戦態勢の彼女の背後には6つの魔法陣が円を描く様に浮かんでいた。
「キャスターよ茶番はここまでだ。マスターを失ったお前とて、手加減はしない。一撃にて葬り去る」
ランサーの身体を包むのは赤い炎。通常なら目に見えない筈の魔力放出の光を、私は網膜に焼き付けた。
全身の魔術回路が熱い。
「行けえぇぇ!!ランサー!!!」
魔法陣から放たれる光より速く。ランサーの槍はキャスターの腹を貫いた。
宣言通り、鮮やかな一撃だった。