第4章 波乱
結界は既に効果を失っており、私達は侵入に成功した。
死体がゴロゴロ転がっている事に目を瞑れば、最上階は奴の財力をひけらかすような絢爛豪華な内装だった。
ギリリと奥歯を噛み締める。これだから石油王は。
地下へと降りるエレベーター内で最終確認をする。固く結んだ靴紐、2本のサバイバルナイフ、サーヴァントに繋がる魔力のパス。
「ランサー、恐らくこれから戦闘になると思うけど、魔力って足りてる?」
自身の身体を満たす魔力の循環を今一度確認した後、彼は答えた。
「うむ。供給される魔力量はお世辞にも多いとは言えないが、戦闘に支障は無いだろう。質の方も大概の魔術師からはやや劣るが……さして問題ではない」
「………………」
「マスター、どうかしたか?」
「父からも素養が無いって言われてたけど、改めてそんなバッサリ言われると傷付くわ」
「そうなのか?」
「…………」
怒ってない。怒ってないよ。
このタイミングで感情を制御できない程馬鹿じゃない。
すー、はー。深呼吸、よし。
その時、空気が凍りつく様な何かを感じた。
「ランサー!」
ランサーの対魔力では太刀打ちできないような、大掛かりな魔術がどこかで発動した。
キャスターの罠?身構えるが、しかし何も起こらない。
「マスター、オレの後ろに下がっていろ」
エレベーターのモニターは終着点……このビルの最下層である地下2階を示す。
鉄の扉が、開く。