第2章 新しい仕事
その後はぽつぽつと人が来ては
何かしらを手にし、丁度の小銭と引き換えに持って帰っていくだけだった
私の仕事は売上と書かれた紙に
売れた商品の横に正の字を書いていくだけ。
なんだか味気なくて拍子抜けする一方
楽だけど頑張りがいが無いのも少し悲しい
せめて仕事に自分の居場所が無いと辛い
考えにふけっていると
もうすぐ18時になることに気付いた
締め作業を始めようとすると
扉が音を立てた
「どうぞ」
いらっしゃいませと張り切るのはやめた
どうぞだったら完璧だ
「ん」
また水と三色団子
お昼に来た人なのかと思い
お金を受け取る時にふと顔を覗いて見た
「え?」
「あ」
大倶利伽羅先生だった
眼鏡をかけていて
昔よりもっと魅力的に見えた
「お前、いつから」
「今日からですよ」
「まさか昼もいたのか」
「ええ、いましたとも」
「そうか」
張り切っていた私を思い出して笑っている
本当に腹のたつ人、と心の中で毒ずく
「いつもいるのか?」
「日曜日以外はいますよ」
「わかった」
終始にこやかな先生
あんなに長く笑う先生は初めて見た
同時に胸が少し苦しくなった