第4章 親愛の時間
鷹岡先生は自分に逆らう者には容赦しなかった。
鷹岡先生に同意しなかった神崎さんの頬を殴り。駆けつけた烏間先生や殺先生には教師に有効的である、教育論の相違を振りかざした。
有効的な手段を瞬時に選び惜しみもなく使うのはさすが、人を育てる教官と言わざるを得ない。
……などと感心してる場合じゃあない。
担任、副担任の力を得られない私達は今、鷹岡先生に言われるがままスクワットをさせられている。
その数300。馬鹿だろ。
この状況を覆すには、鷹岡先生が再び恐怖を振りかざし殺先生達の力を借りるしかない。つまり生徒側が異を唱える必要がある。
言わずもがな、恐怖の生け贄は決まっている。こういう時のための私だ。前原君と神崎さんの怪我を防げなかったが、これ以上怪我人を増やす訳にはいかない。
後頭部に回していた手を下ろし、曲げていた膝を伸ばして真っ直ぐ前を見据える。
「お、おい柊…」
「なにしてんだ? 父ちゃんはまだ休んでいいなんて言ってないぞ?」
糸を垂らした瞬間にかかった。せっかくの『家族』だ。存分に使わせてもらおう。
「僕はあなたの考えがわかりません。こんなの合理的じゃないし、疑問しかない」
「まだお前が子供なだけだ。父ちゃんの言うことさえ聞いてりゃ、あんな怪物一捻り出来る」
「模範的な子供じゃなくてごめんなさい。僕は、どうしてもあなたを"父親"だと思えません」
鷹岡先生を真っ直ぐ捉えていたお陰もあって、先生の出方はすぐにわかった。けれど。
私は何もせずただじっと先生を見つめていた。
鈍い音が響いたのは、左頬に衝撃を受けた後だった。