第11章 【千石切甘】 気付かなかった
「けっ…。情けねぇな千石。」
「亜久津かい?いつからいたの…?」
「最初からだ。」
俺が俯くと、亜久津が木の影から声をかけてきた。
「あいつがどんな思いで堪えてたかわかってんのか?
他の女と腕組んで歩いてるお前みて、何回涙流したかわかってんのか?」
「でも、結菜ちゃんも亜久津と浮気してたんだろ?」
辛かったんだ。
たまに亜久津と結菜ちゃんが話しているところを見ることが…
「ふざけた事言ってんじゃねぇ!!!あいつは幼なじみだ。
なんの話しを聞くのかと思えば、いつもテメェの話しで、
デートが楽しかっただとか、また他の女とデートしてただとか、
くだらねぇ話しばかりしてたんだよ。」
「っ…」
「昨日夜中に呼び出されたと思ったら"もう嫌われた"とか"捨てられる"とか。
しまいには"もう死にたい"テメェは男として最低だ。」
知らなかった、結菜ちゃんの思い。
気付かなかった、俺の思った以上に強い想い。
話していただけで浮気と思うなんて。
最低だ…