第11章 【千石切甘】 気付かなかった
次の日学校に行くと、あっという間にお昼になった。
俺は急いでお昼を食べてコートに向かった。
コートに行くとフェンスに指をかけてコートを見つめる結菜ちゃんがいた。
見たことのない、寂しそうな表情に、ざわつく胸を抑えていつものように声をかけた。
「結菜ちゃんっ」
「キヨ…。テニスしてるキヨは、すごくかっこよかったよ。」
「…結菜ちゃん?」
「私達、ここで出会ったんだよね。」
「そうだね!」
「だから…、ここで別れよう。」
…―。
俺は一瞬耳を疑った。
「あははっ…冗談キツイよ…?」
「私も。精神的にキツイよ…。私以外の女の子とデートしたりして…。知ってたよ。いつも。それでも好きだから我慢してた。でも、もうおしまい。恵美ちゃんと付き合ったら…??」
「それっ…昨日…。」
「バイバイ、千石くん。青春をありがとう―…」
一筋の涙を見せながら、
俺の横を通り過ぎた。
辛い想いをさせていた。
気付かれていた。
俺が気づいてないと思っていただけで。