第4章 【丸井甘】おかし。
コートにつくと、男子テニス部に集まる女の子たちの"キャーッ"っていう声をバックに練習をしていた。
休憩中、
なんとなくブン太くんが気になって、
首にタオルをかけてラケットを持って男子のコートに行ってみた。
今日は自主練だからうろうろしていても怒られはしない。
「おっ、クッキー持ってるやつじゃん!!」
男子コートに近づいた瞬間、休憩中らしいブン太くんに大声で呼ばれた。
そしてフェンス越しにブン太くんが近寄ってくると、
「なぁー、クッキー…」
「ダーメ。」
「いーだろー。」
「ダーーメ!!」
「クッキーっ!!!!」
「…」
クッキーを求めるブン太くん。
…あげるものかっ。
「菊田じゃないか。」
「柳くん。」
あたしと同じクラスの柳くんも近寄ってきた。
ブン太くんとのやりとりの声が大きかったんだろう。
…なんか、ごめんなさい…。
「…あ、そうだ。あたしと柳くんペア、ブン太くんと…あのワカメくんペアで試合しよ!
あたしに勝てたらクッキーあげる!
ね、いいでしょ?柳くん、ワカメくん!試合しよ?今はダメかな??」
「今は休憩中だから大丈夫だ。それにしても、面白そうだな。」
「やった♪」
「いいっすよー…って、ワカメってなんスかーっ!!切原赤也っス。」
「あ、ゴメン。」
名前が曖昧だったため、近くにいた切原くんをワカメとよんでしまった。
「よっしゃー!!クッキーのために勝つ!!」
なんか変に意気込んだブン太くんと、
ワカメと言われたことで怒った切原くん。
二人ともオーラがなんとなく怖くて…
つい苦笑いをこぼすあたし。
「菊田、俺とペアなんだ。あんなオーラ怖がることはない。」
「うん。ありがと」
そんなあたしの心を察してくれた柳くんは、あたしの髪を撫でてコートに入った。
柳くんも、意外と紳士だよね