第4章 【丸井甘】おかし。
「…なぁ、お前、お菓子もってるだろ。」
「…え…?」
放課後、女子テニス部のあたしは、部活に行こうと廊下を歩いていた時のこと。
ガムを噛んだ赤髪の人が、すれ違い様にあたしの腕をつかみ、少しヨダレを滴ながら問いかけてきた。
…あぁ、このマヌケ顔は丸井ブン太…。
ブン太くんは、男子テニス部。
コートが隣同士だから、話したことはないけど顔と名前はわかる。
マヌケ顔、何て言ったけど本当はかなりのイケメン。
彼のファンも多いくらいだ。
「…クッキーだけど…。」
「くれっ!!」
「…はぁっ!?」
初めて話す人に物をすがるなんて…。
しかもこれは、一応手作りクッキーだ。
「頼むよー。な??」
う…。
目の前で手をあわせて、
上目遣いで見つめてくるブン太くんがちょっと可愛いと思ってしまうあたしは、
どうかしてるのかな…??
「ダメですっ!!部活終わってからのあたしの楽しみなんだから!!」
あたしは、そういい残してダッシュで走りさった。
だって、あの場にいたらあたし…。
ブン太くん好きになっちゃいそうだったから。
イケメンって…ズルい