第8章 【桜色】パニック &ぱにっくシンドローム
~Sideハイリ~
知り合いを見つけてしまい
私のテンパり具合はさらに加速した。
「轟くんっ!
飯田くん居る…居るっ!!」
「居るな、
切島…上鳴も居るな。」
そんなこと言いながらも、肩を抱く腕の力は更にこもっていく。
冷静に返すんじゃない!
わかっているならこの手をなんとかして欲しい!
これはもはや周りから庇っているんじゃなくて
逃げられない様に捕まえられているんだ。
腰に回された手がブレザーの中に入って来て
シャツの上から撫でられるだけで目が回りそうだ。
指の腹で背中の溝を撫であげられると
震えた息が漏れる。
(待っっっって…っ!)
もはや酸欠状態で声にならない。
金魚の様に口をぱくぱくさせるだけ。
伝わってるのか、伝わってないのかわからないけれど
滲む視界にとらえた轟くんの顔は、愉悦に満ちていた。
「もうバレてんなら
隠す必要も無くなったんだよな?」
周りに聞こえないように配慮してるのか
はたまた、意地悪したいだけなのか
囁き声が耳をくすぐってゾワリと震えが駆け巡る。
やっぱり気にしてたんだろうか…。
だとしたら
これは彼の気持ちを蔑ろにした罰なのだろうか…
頭ではあり得ないと思っているのに
身体が流されようとしている所が一番怖い。
憎まれ口は精一杯の抵抗だ。
「っ…それとこれとは
また、別の話でしょっ…!?」
「問題ねぇ、周りは自分の事で手一杯だ。」
ククッと笑ったのが胸から伝わる振動でわかる。
くっついてる分、感情がわかりやすいはいいけれど
私の反論すら愉しんでいると言う事しかわからなかった。