第8章 【桜色】パニック &ぱにっくシンドローム
~Sideハイリ~
自分の身体が熱くなってる事なんて
自分が一番よくわかってる。
もう、もう気が気じゃない。
確かにもっとくっつきたいと思ったし
今だって正直嬉しい部分もある。
だけど流石にこんな雑多の中ではダメだ。
あれだ情操教育上、と言うやつだ。
何より今は緊急事態なんだ。
もっと冷静にならなきゃなのに…っ
「……っ」
気を逸らす為に見える限りを見渡せば
非常口前の混雑は悪化する一方。
「人が倒れた!!」や「押すな!!」等
混乱が混乱を呼んでしまっている。
次第に割と近くで
聞き覚えのある声が上がった。
「皆さんストップ!!
ゆっくり!!
ゆっくり!!」
切島くんだ…すぐ隣で上鳴くんがぼそり「んだコレ」と呟くのさえ聞こえる距離。
よくよく見てみれば、うちのクラスの人だっている。
当然の事なんだ、ここは昼休みの食堂
誰が居たっておかしくないんだ。
周りを把握すればするほど羞恥は増していく。
ゆっくりと背を這う大きな手が
引き抜かれたシャツの下に入って来てヒヤリと触れた。
肩が跳ねたのは冷気の為か、這いまわる震えの為か
降伏した方が楽になれる気がする
そんな事まで考える。
もう、限界だった。
「お願いっ…こういうのは
人の居ないトコで…っ!」
目の前のシャツを掴んでの懇願。
出たのは間違いなく本音だ。
見上げた轟くんの目は細められ、
その目には勝ち誇ったかのような笑みが浮かんでいた。