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【ヒロアカ】UAシンドローム【轟焦凍R18】

第7章 【桜色】UA チームカンファレンス


~Side轟~


(入るタイミング、無くしちまった。)


保健室のドアに手を掛けた瞬間に
耳に飛び込んできたハイリの声は、悲痛に満ちていた。


「やっぱり私は、ちよちゃんみたいに
雄英の看護教諭になるべきのかな……?」


なんでこんな話をしているのか
なんで泣きそうな声なのか
わかる訳がねぇ。

わかったのは
今は入るべきじゃないって事だけだ。

ドアに背を付けて待つ間
聞こえてくるのは聞いた事のない声音ばかりだった。


(第三者から聞いちまった…の次は、盗み聞きか…。)


俺が知っているハイリの事情はこんなんばかりだ。
また一つ、罪悪感が増える。

よく考えてみれば、
あいつは基本受け身で俺の訴えを聞いてばかり。
自分が悪いのだと頭を冷やす為、後ろ頭を預けたドアは冷やしてくれる程冷たくはなかった。

やがて声が途絶えた頃
ドアが開かれようとしているのを感じ身体を離す。
勢いよく開いたドアの向こう側に居たのは
もちろん、ハイリだった。


「あれ……轟くん!?」


一瞬見えた不安気な表情はすぐに笑顔へと色を変えた。

たかが数時間だってのに
長い事見てなかった笑顔の様に思えて
思わず髪に触れる。

普段のハイリなら「人前で!」なんて言うんだろうが
よっぽど参ってるのか、リカバリーガールは特別なのか
くすくす笑いながら気持ちよさそうに撫でられる様は
まんま仔犬だった。


「ね、どうしてここに?」


何事も無かったかのように笑うのは
心配かけまいとでもしてんだろうか。
例え本物の笑顔だとしても
僅かに垣間見えたさっきの表情が頭から離れねぇ。


「クラス覗いたら居なかったからな、
あとはここしか思いつかなかっただけだ。」

「流石だねぇ…。」


俺はこいつに甘えてばっかりだ。
今だってハイリのためじゃねぇ
自分が触れたいから、その思いのままに行動しちまうだけだ。


(俺も少し、大人になるべきか…)


元々そこまでガキっぽいとは思ってなかったが
ハイリの前だと遠慮なく我を出しちまう。

今この決意さえ
ハイリの為なんて殊勝なモンじゃなく
コイツにとって頼れる存在でありたいっていう
自分のエゴに過ぎなかった。





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