第7章 【桜色】UA チームカンファレンス
「良いわよねぇ、青春よね!
あの子もそんな歳になったのね!」
「YEAH! 全くだ!! 奇しくも推薦入学者と良い仲になっちまうとはなァ。どーすんだ? 担任よォ?」
一通り報告を受けた後
一番に口を開いたのはやはりこの男。
その日の授業で娘の悩みに気付いていた事もあって
寧ろ納得した様子でその担任を見やる。
若者の青い春を楽し気に謳う同僚に対し
話を振られた男は
無造作に伸ばされた髪から覗く
無気力な目を上げた。
「かえって好都合、
あのじゃじゃ馬をこれ以上甘やかすのは時間の無駄だ。
構わないな? 婆さん。」
気だるげに寄せられた目の奥に潜むのは
期待か不満か傲慢か
それを受けた老婆は皆に悟られぬよう息をつき
ただ首を縦に振った。
「勝手におしよ、決めるのはあの子だ。」
それだけ言うと今度は主張するかのように大きく息をつき
自分の城へ戻るべく背を向ける。
まだ年若い3人の教師の議論から逃れるため
廊下へと続く扉から一歩出ると
そこはもう生徒も帰りつくした無人の空間だ。
「何の因果かねぇ、皮肉なもんだ。」
ぽつりこぼれた独り言は
誰も拾うことなく落ちていく。
ただ
緑谷の怪我の具合を担任に伝えに来ただけだったのに、全く要らぬ情報を拾ってしまった。
いや、
とうに予測は立っていた
恐らく本人たちよりも早く。
仮定が確定に変わっただけだ。
それだけの事
ただそれが皮肉だと言うだけの事。
「お菓子を買い足さないとね。」
暫く訪問客が絶えなさそうだ。
夕暮れに浮かべた苦笑は悲哀に満ちていた。