第48章 【深緑色】症状(中期)
一見味方を装いながら
仲を揺さぶるような発言をテーブルに並べ
ツイと口端を上げやがる…
満足気に細められた目を
愉悦と優越に塗れた眉毛が覆う
横目で見た女の表情に右頬が引きつった。
(何度見ても薄気味悪ぃ…。)
睨めば小馬鹿にしたような横目が
「お前にも利はあるだろう?」
そう言っては笑いかけてくる。
本当に俺にしか見えてねぇんだろうか
バカップルの表情に変化はねぇ
こうなってくると
俺がおかしいんじゃねぇか
そんな考えすら過ぎっちまう。
内心、舌を打った。
(チッ…やりずれぇな…)
クソが
悉く主導権を掻っ攫う気か。
邪魔させまいと先手を打って来やがる度に
俺が強気で押せねぇのは
理があるのは事実だからか
胸糞わりィ
まるで弱みでも握られてる気分だ。
ただ…
「轟くん、ちゃんと捕まえとかないと
ハイリちゃん取られちゃうよ~?」
ただ一つ
この状況を放置してた方が
都合が良いだろう事が一つだけ
「それはねぇな…。」
狼女の言葉に
轟は間を入れず口を開いた。
フッと口を緩め、見やるは隣の女
亜麻色の髪を指に絡め口元のスープを親指で拭う。
指についたソレを舐め取った舌先に
頬を褒めた女はハイリだけじゃなかった。
「ハイリが俺から離れるとは思えねぇ…。」
注がれる幾多の視線を気にも留めず
な?と笑いかける横顔に
締まらねぇ笑顔でコクンと頷く亜麻色の頭。
二人の世界に
主導権なんざ女ごと置き去りだ。
八つ当たりか
スッと寄せられた視線の醜さといったらねぇわ
俺の所為だとでも言いてぇんか。
(くだらねぇ…。)
俺だってちっとも面白くねーわクソ女。
こっちはテメェなんぞより
クソほどこんな空気を見せつけられてんだ。
あぁ…気に食わねェよ
だがよ
今この時に限っては
清々するわ。
どんな“個性”か知りゃしねぇが
女の掌上に居るであろうバカップル。
それが思い通りに動かねぇんだ
苦痛通り越して屈辱だろ。
(ケッ、ざまァねぇな。)
二人を見る狼女の顔には怒りより悔しさが見えた。