第47章 【深緑色】デイドリーム
情けないことに
有難いことに
私はいつだって焦凍にきっかけを貰ってる。
せめて
お返しはしなきゃって
そう思ったのはまだ…捻くれた私が居るからなのかな。
「大丈夫、私が全部治すから。」
思いなんかより
出た言葉の方が素直だった。
「私が全部治す
怖がらないで怪我していいよ!」
全部だなんて
ちょっと大見栄切っちゃったかも
だけど焦凍だけじゃなく
飯田くんも緑谷くんも
笑いを止めて私の事を見てた。
ぽかんと開いた三つの口は
まるで石にでもなったみたいに全然動かない。
きっと、私がこんなこと言うのが
意外だったんだろうな…。
それが変われてる証拠みたいに思えて
頬が痛くなるくらい口角が上がったの
人差し指をピンと立てて
得意気に笑えたの。
「ただしっ!
ちゃんと私のトコに帰って来ること!」
これが――私の夢
なんだって治す
絶対死なせない
絶対だなんて難しいと思う
私はお母さんじゃない
でも私が思い描く夢はやっぱりお母さんで
「お返事は?」
そんな自分を笑いながら焦凍の頭を撫でた。
私、素直じゃないの。
周りに言われるがままなんて嫌だって意固地になってた。
でもさ、不思議。
自分で見つけたなりたい自分って
結局それなのね。
「あぁ…わかった。」
フッと和らいだ視線が
私の心の底を案じるように頬を撫でた。
後を追うように指先が触れる
温かい、焦凍の温度だ
生きてる温度だ。
この温度を護りたい。
私達が目指す生業は光ばかりじゃない
いつだって命がけ、死と隣り合わせ。
「だからってわざわざ怪我するのは駄目よ?
特に緑谷くんっ!」
「――ッハイッ!」
「飯田くんも!」
「あ、あぁ…」
大切な人が居なくなるかもしれない
その恐怖を知った。
どんなヒーローにだって
その身に不幸があったら悲しむ人がいる。
私に居るように
焦凍にも居る
『人々を護りたい』
ヒーローじゃなかろうと
ヒーローだろうと
その命を護りたい。
夢なんだから
大きく出たっていいでしょ。