第47章 【深緑色】デイドリーム
『―――院長先生が君に話があるそうだ…。』
あの二人を残して部屋を出るのは
少し気が引けたけど
医院長から直々のお呼び出し。
考えられる事と言えば……
「退院後の
アフターケアを頼むよ。」
だよね、それしかないよね。
いわゆる転院手続きのようなものだ。
怪我を負った3人のクラスメイト
それぞれ軽症とは言えないけれど
それでも一番重いと言えるのは飯田くんだろう。
説明を受けながらフムと唸る。
「君がついているから悪化はしないと信じているよ。」
「変なプレッシャーは止めてください…。」
どうやら彼の左腕には
後遺症が残るらしい。
とは言っても
多少の痺れと違和感程度で
移植手術をすれば治る可能性もある。
可能性があるってのは病院ならではの言い方で
……違うな
絶対なんて病院じゃなくても容易に使えない言葉だ。
(つまりは完治する可能性は
わりと高いってことで…。)
だけど、飯田くんは手術を頑なに拒否したらしい。
彼の性格から考えて
自分の失態への戒めってとこだろう…。
まったく緑谷くんといい
飯田くんといい
焦凍だって
私のクラスメイトは怪我が尽きない。
その上頑固。
――はぁ…
ほろ苦い笑みが漏れた。
わかってる
誰よりも知ってるの
ヒーローって融通が利かないの。
「でも、お任せください…。」
何処かで何かがストンと落ちた。
刺さっていたのかもわからないくらいの魚の小骨が
やっと取れたみたいな…。
初めは強要された私の役目
自分の存在意義
見えた気がしたの
輪郭だけがぼんやりと……。
「ハイリちゃん
頼もしい目をするようになったね…。」
先生がそう言ってくれたから尚更、ね?
これは間違ってないんじゃないかって
思えたの。
「はい、皆に追いつきたいです。
そう思えるクラスメイトです…。」
紛れもない本心だった。
深い、深い溜息のような…。
クスと息が漏れた
急に会いたくなってしまって
クラスメイトに
私の患者さんに。
「ではっ私は早速患者さんの元へ帰りますねっ!
カルテ書かなきゃ!」
「ああ、そうしてくれると嬉しいよ。」
私のやりたい事
なりたい自分
夢見る自分をずっと夢見てた。
小さな夢の足音が聞こえた気がしたんだ。