第47章 【深緑色】デイドリーム
飯田くんの背をさすりながら
詰まったであろう林檎が
胃に降りるのを待っていた。
気管に入ったら大変…
怪我をしてる今
ただでさえ免疫力も体力も落ちてるというのに…。
(もうっ焦凍は何がしたいの…。)
なんで突然飯田くんに意地悪するのやら
喧嘩でもしたんだろうか
いや、そんな暇なかったよね?
二人が出ていくまではそんな空気はなかった。
なのに何処かご機嫌斜めの焦凍くん。
横顔は安定の無表情だけど、目が座ってる。
小さくなった林檎をつまみシャリと食べる不満顔は
言っちゃなんだけど、ヒーロー志望にはとても見えない。
(顔が怖いよ、焦凍くん…。)
ただ…どれだけ諫める視線を送ろうと
そっぽ向いたまま黙々と林檎の欠片を食べているものだから
あぁ、と心の中で手を叩いた。
(そっか
猫リンゴを切り刻まれたのが嫌だったんだね?)
多分そうだ
もうそれしか考えられない。
なんなのもう
可愛いなもうっ!
そんなに気に入ったんなら
いくらでも作ってあげるよ!!
胸の内を必死に抑えて
あやすように頭を撫でた。
「ごめんね…?」
もうこうなったらどこまでも甘やかしてあげようって
小さくお詫びを告げると紅白の頭はコクンと頷いたの。
やっと林檎を食べ終えたのか
飯田くんが濁音交じりを咳を払う。
何か言いたげだけど
やっぱ苦しかったんだろう
「ん"ん"っ」ともう一度咳払いをしてその口を開いた。
「そういえば楠梨くん――」
もう慣れてしまったその呼び名。
小さい頃は『ハイリくん』と呼ばれてた筈だけど…
いつ頃から変わったんだっけ?
なんて、的外れな事考えながら振り向いた。