第6章 【桜色】物言えぬ処方箋
~Side轟~
アイツは
何がしてぇんだ…。
ヒーロー科だのに限らず
入学して間もないこの時期に
他のクラスの人間が教室に居りゃ嫌でも目立つ。
かかわるまいとしても賑わう会話を遮る術も無く
耳に入る会話から不可抗力でここへ来る羽目となった…
までは良い。
そこまではわかった。
だがあれよあれよと人が集まり
自己紹介まで始まったと思いきや
「あ"? なんでこのモブ女が1-Aに居んだよ?
あ"ァ!?」
遂には絡まれてやがる。
何がしてぇのか
こればかりは理解できねぇ…。
爆豪の怒声にキョトンと呆けた目を上げ
おもむろにメガネを取りじっと見つめるハイリ。
こうやって客観的に見てると
アイツがいかに肝が据わってる女かがわかる、
爆豪の怒号に対してひける気配が一切ねぇ。
むしろアイツが今怯えてるのは俺の方だろう
たまに俺を窺い見るハイリは委縮したガキみてぇだ。
朝の約束を守ってか
その約束に理不尽さを感じてかはわからねぇが
今時点で俺が動く理由は見当たらなかった。
「待てよ爆豪!
HRまで時間あるってのにそれはねーだろ?
何処に居ようが自由だろーがよ!」
「そうよ爆豪ちゃん、
それに女の子に対してその言い草は感心しないわ。」
次第に野次が飛び始めて、爆豪の怒りも増す。
次に上がった猛りと共に
上げられた爆豪の両手がバチと火花を散らした。
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"うるっせェ!!」
「かっちゃん!?」
最初に動いたのは緑谷だった
右腕を掴み制止しようと試みるも払いのけられ
その拍子に左手の平でBOOMと小爆発が起きる。
本人も予期せぬ爆破だったようだ
自分の左手を見、すぐさまその一番近くに居たハイリへと目を向けた。